「林業やってます」っていうと、必ず返ってくるレスポンスがこれです。
「どういう仕事なんですか?」
「どういった業務が中心になるんですか?」
「斧で木を伐るんですか?」
「与作歌ったりするんですか?」
「小野が与作歌うんですか?」
「小野が与作にゴール決めるのが林業ですか?」
ってもうカオスですよ。
さすがに小野→与作までのホットラインとまではいかないけれど、それに近いくらいのカオスな質問が飛んできます。斧のくだりまでは普通に言われます。
あとあれね、林業やってますって言うと「大変ですね~」これもよく言われます。お前が林業の何知ってんだ!って思っちゃうんだけど、でもそういうイメージがあるんでしょうね。
「何やっているかわかんないけど、大変そう」これが普通の人の、林業のイメージなんだと思います。
特にわかんないのが収入の得方みたいです。
どうやって儲かってんのかわかんない。木を売って儲かってんの?それだけなの?もうかなり不思議みたいです。
事実私もやるまではちゃんとわかっていませんでした。第一次産業で一番不思議な産業が林業。これって間違いないと思います。一番なにやっているかわかんない。
簡単に言うとですね、本来林業って木を売る事でしか収入って得られないんです。
『木を伐って売る→お金を貰う→そのお金で次の木を育てる→そしてその木を伐って売る→』
これが林業の仕組みです。今も変わりません。
ただ今これが出来ない状態にあります。
『木を伐って売る→①木の値段は安く、作業にかかる人件費は高いので自前じゃ次の木を育てられない→国や県、市町村からお金(補助金)を貰って育てる→育った木を伐って売るにも①と同じだから補助金を貰って伐る→』
これが今の林業です。
つまり国や県の補助金が作業費となり、それで食べているのが林業(山師)なんです。
言うなれば公共事業で食ってる。税金で食ってる。これが山師です。本当に申し訳ないんだけどこれがリアルです。
じゃぁ補助金無くなっちゃうとどうなるのか。
「税金勿体ないから、自前でどうにかしろよ!」といきなり補助金カットしたとします。
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すると山主は山の木を伐りたくても赤字になるので伐りません。もし伐っても次の50年間木を育てるお金を捻出できないので、木を植える事もなく裸山のまま放置されます。
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すると山は荒れだします。
少しの雨で山が崩れやすくなります。山が崩れると川が埋まり土石流がおこります。山の水を蓄える機能も弱くなり、洪水もおきやすくなります。
↓
街ではけが人や死者が出ます。農業被害、住宅被害等で経済的損出は雨ごとに何億円にもなります。
安心して住めないのでダムが出来始めます。ダム一つで何百億円です。海が埋まり魚が採れません、養殖で魚を増やします。何億円もかけて…
↓
山の手入れがされない事で、身の危険が増えた上に暮らしにくい、そして年間国が必要とする税金が何倍にもなりました。国民の税金もたらふくあがりました。
こうなっちゃうんですね。だから国や県も林業にお金かかっても『公的な機能を保持する』という意味で税金を投入し続けているんです。
でもやはりちょっと林業にお金を使いすぎなのも事実。
だって日本借金国ですからね、なるだけ支出は減らしたい。だから今補助金に頼らなくてもできる林業を目指して、少しずつ動き出しています。
だけどやっぱりほとんどの林業関係者はぴんと来ていません。「補助金はいつまでもある」と心のどこかで思っています。「補助金無くなったら林業はできん!」と胸張って言う人もいます。現段階では事実だとしても、胸を張る事ではありません。
「補助金でないからこの山の手入れはやらない」
こういう考え方も蔓延しています。これは完全に本末転倒になっていますよね。こうなると日本が経済破綻した途端に林業も破綻するでしょう。
『補助金に頼らない林業』
これを目指すのが、私達若い世代の役目だと思っています。
林業はひとスパン50年の先が長い産業です。50年後を想像できる人間じゃないと、そこに歩み寄れません。何より林業関係者である前に、一人の日本国民です。
自分たちの将来、自分たちの家族の将来の為に、負担を減らす事を考えるのは当事者としての責任だと思います。
だからと言って上の世代の力が要らないという訳ではありません。絶対に必要です。だから足ではなく手を引っ張って欲しいなと思います。そうすれば若い力は必ず実現するでしょう。
そうそう、最後に言っておきますが、国や県の補助というのは林業には少なからず必要です。経営努力だけじゃ補えない部分もある。
だって公的な意味合い強いですからね林業。未来になっても林業の根本的な機能は変わりません。
だから『林業=公務員』にしたって良いと思うんです。事実海外のフォレスター(森林専門官)は公務員ですよ。そして社会的地位も高い。それだけ重要な仕事だと位置付けています。
今の林業は木を売るという引出ししか持っていません。
でもこれからはもっといろんな引出しが必要だと思うんです。
「この貴重な花を守っていくから付近の市町村さんお金下さい」とか、「豊かな水を海まで届けますから、漁業組合さんお金下さい」とかね。そのお金を山の管理費に充てていくのは立派な産業としての引出しだと思うんです。
「林業やっています」
「どの山を管理されているんですか?」
「あそこですか、あそこの山はしっかり管理されていますよね。私は麓に住んでいます。いつもありがとうございます」
こう言われる50年後を目指すのが、今を生きる私たちの役目だと思うんです。
50年後は81か…
できればそこまでには引退したいな(笑)

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勇気 (木曜日, 13 3月 2014 12:48)
渡川で生まれ(厳密に言うと日向だけど)渡川で育ってきたのに全然知らんかった。「無知は罪なり」やね。死ぬまで勉強せんといかん。どんげかせんといかん。
山師 (金曜日, 14 3月 2014 09:43)
>勇くん
いやいや俺も山師なるまで知りませんでした。というか山師含め山間部の人もほとんどの人が理解していない実状だと思います。
ほんとどげんかせんといかんので、地味にブログ書いてますwなるだけ普通の人も分かりやすい様に。
昼はどげんかせんといかんけど、夜はどげんかせんでもイッちゃうっていうね。困ったもんです。