昨日まで書いたように、中国木材が日向に進出する事で基本的に良い事づくめです。
伐られずに困っていた山に手が入り、木材の値段は高くなり、また昔の様に山に関心が戻る。これは確かに良い事です。仕事も増えるだろうし山師としても大助かり。
でもやはり心配な事があります。
これは「中国木材が来るから」というよりも、「宮崎県内で木材需要量が増え過ぎるから」という事なんです。
つまり需要と供給のバランスが崩れる。需要に対して供給が追い付かない。これが心配なんです。
この1~2年のうちに新規に参入する大量の木材を必要とする会社がいくつもあります。これまで書いた中国木材を筆頭に、都農の木質バイオマス工場、川南の木質バイオマス工場、都城にもできますね。あと他にもあったっけ?とにかく宮崎に眠る木材を狙って沢山の企業が進出してきているんです。
これは経済的にはとっても良い事なんですが、問題は「足りるかな?」ってとこなんです。前回書いたように、中国木材が年間必要としている木材だけで、今耳川広域森林組合が生産している木材と同じ数量です。そこに既存の市場が必要としていた量も生産しなくちゃいけない。そして木質バイオマス工場が必要とする量も生産しなくちゃいけない…おいおい、ほんとうに毎年毎年生産できるのかよって感じです。
木質バイオマス工場は「いらない林地残材を下さい。曲がったC材を下さい」って言ってるけど、出せないから林地残材になっている訳であって、そんなに量だせる訳じゃないんですね。間違いなくB材、下手したらA材にも手が伸びるかもしれないでしょう。
こうなってくると起こりうる問題を上げてみましょう。
①山の木を伐りすぎてしまう。→山の荒廃
②木が足りなくて企業の撤退
③無理な供給体制構築により、林業災害(労災)の増加
④A材も燃料になりだしたら、林業(山師)の意義ってなに?魅力の低下により、後継ぎの低下、将来的な持続性の低下
んーー怖いですね~。
まずやっぱり伐りすぎになるのが怖い。
需要に答えるべく山の安定を無視して木を伐りまくっちゃうと、間違いなく山は崩れます。生態系も乱れます。木は伐ったら50年はもとに戻りませんからね。伐ってから後悔しても遅いのです。やはり県なり各自治体は、伐り過ぎない為に独自のルールを決めるべきです。そうでないと資産を私たちの代で食いつぶすどころか負の遺産を次世代に背負わせる事になるでしょう。
そしてリアルに起こりそうな、供給量確保の為に素人が木材生産現場に入り死亡事故多発。
現在想定されている木材の需要に対して、もしかすると山は耐えうるかもしれません。でも間違いなく足りないのはそれを生産する人材なんです。そう、山師が足りない。
現在でも人員は足りていません。年間の事業をこなすのがやっと。そこにどーーん!と仕事増えてもまかないきれないんです。山師はただでさえ労働災害の多い職種です。慣れた人間でさえ怪我をします。そしてこの「労災が減らない」という問題を解決していません。そこに「仕事になるから。儲かるから」と新規参入で素人が入ってきた日には労災は更に増加するでしょう。
林業の事故は怪我じゃすみませんからね。簡単に死にます。昔取った杵柄で30年ぶりに山に入る60代とか、失業中で取りあえず日雇いで来た奴とか、間違いなく怪我します。今の林業は日本の産業の中でトップクラスの労災保険率です。これ以上労災増えると更にアップさせられるかも。林業事業体は死んじゃいます。
次に木材供給が追い付かなくて企業の撤退。
これは直接的な影響は県民あまり無いかもしれませんが、やはり雇われていた人、これに合わせて事業拡大した人にとっては大きな痛手です。なによりイメージが悪い。新規事業が沢山参入したのに受け入れきれなかった宮崎県というイメージが付きますからね。今後の企業誘致にも響くでしょう。
この辺でやはり問題なのは、新規で参入してくる木質バイオマス発電の会社が林業に専門的ではないという事です。
中国木材は別です。林業専門で、林業の実情を踏まえ日向に進出してきます。伐った後の造林(植林)にも配慮があります。
ですが他の木質バイオマス発電所のオーナー企業は、基本的には林業が専門ではありません。林業がやりたいから木質バイオマス発電所を建てるんではなく、自然エネルギーの発電事業が儲かりそうだから参入しているだけです。
ここ数年、とくに東日本大震災以降自然エネルギーの発電に対する国の動き大判振る舞いでした。
<国>→木で発電したら結構高い単価で買い取ってくれる。そして今やればその高い単価のまま20年買い取ってあげるよと言っている。
<林業>→日本は木が伐られず問題になっている。山に捨てる材があるという。木の値段は安いという。
↓↓
<金持ち企業>よし!木で発電したら儲かるじゃん!!
こうなった訳なんです。木はあってもそれ伐る山師がいないとか、伐り過ぎると山がどうなるとか知らないんです。いや関係ないのかもしれませんね。下手したら20年もてばいいと思っているかもしれない。20年で投資回収して、儲けでる算段でしょうからね。
そして私が一番気にしているのは、山師の存続の部分。
仕事はそりゃあるでしょう。20年は大丈夫かも。だけど50年かけて、じいちゃん・おやじ・俺と育ててきた木が、どんなに真っ直ぐで綺麗な木をつくっても、最終的に薪(燃料)になってものの数分で燃やされて一瞬の為のエネルギーになるのであったら、それって山師の技術って必要なのかなと思うんです。子どもたちに「山師いいぞ!」って本当に言えるのかな、薪作りたい子どもっているのかなって思うんです。
燃えればいいのなら技術はいりません。山師もいらないでしょう。ただ生産すればいいのなら工場と一緒。なかなか「将来は工場に勤務したい!」って子いませんよね。木質バイオマスは林業にとって大事な引き出しですが、本当の意味で持続とはなんなのかを考えた上で、段階的に取り入れたいものです。
とにかく動き出した訳ですから、今ここで後悔したって遅い訳です。今必要なのは、これから起こる事をどこまで想定して先手を打っていくのか。20年後に「想定外でした」っていうのは通じないのです。逆に想定内で先手を打っていけたら、宮崎は間違いなく日本の林業をひっぱるリーダーとなるでしょう。
まずすべきと事は、木を伐り過ぎない宮崎独自の条例を作る事。
そして宮崎県民はどんな山を将来残したいのかを考える事。なんだと思います。
中国木材が「宮崎に進出して良かった」と思わせるような動きを見せつけてやりましょうよ。
いずれにしてもピンチはチャンス。世界に林業王国宮崎をぶち込んでやりましょう。
コメントをお書きください
ゴトー (月曜日, 12 5月 2014 21:02)
激しく、激しく、同意です!
条例づくりいいですね、ホンモノの認定技術指導者山師も居なきゃ、ですね。
山師 (木曜日, 21 8月 2014 12:32)
>ゴトーさん
すいません、コメント気づいていませんでした(笑)
しかし久しぶり記事見たら、良い事書いてるな~って自画自賛しました(笑)作りましょうよ、条例。現場から突き上げて行きましょう!
まこと (火曜日, 08 12月 2015 09:44)
このような意見を書くのであれば代替案を書くべきかと。
間伐材の処理はどうするのでしょうか?
山師 (土曜日, 23 1月 2016 15:19)
>まことさん
コメントありがとうございます!
こんな古い記事にアクセスして頂いてありがたい限りです。
そして返信遅くなり申し訳ございません。
えーっとですね、まず代替え案というのは必要ないんですよね。
記事にも書いていますが、もう決定して始まっているんですから、対案を考えるよりもこの機会をどう理解して、どう活かすのかが大事だと思っています。
とにかく動き出した訳ですから、今ここで後悔したって遅い訳です。今必要なのは、これから起こる事をどこまで想定して先手を打っていくのか。20年後に「想定外でした」っていうのは通じないのです。逆に想定内で先手を打っていけたら、宮崎は間違いなく日本の林業をひっぱるリーダーとなるでしょう。
↓以下コピペ
まずすべきと事は、木を伐り過ぎない宮崎独自の条例を作る事。
そして宮崎県民はどんな山を将来残したいのかを考える事。なんだと思います。
中国木材が「宮崎に進出して良かった」と思わせるような動きを見せつけてやりましょうよ。
いずれにしてもピンチはチャンス。世界に林業王国宮崎をぶち込んでやりましょう。
この部分ですね。
久しぶり見直しましたが、この部分は今でもそう思っていますよ。
あと大事なのは
①間伐材は処理するものではなく活用するものだという事
中国木材も処理しに来ている訳でもありませんし、山側も処理という考え方はNGです。
間伐材で儲ける仕組みを考えないと
あと
②中国木材は間伐材だけを目当てに来ていないという事
間伐材だけでは全く足りませんし、間伐材だけが木材ではありません。
中国木材はむしろ皆伐してどんどん量を持って来て欲しい訳です。だから宮崎なんです。
今の宮崎は「間伐の遅れが問題」という時期は過ぎました。(もちろんそういう山もありますよ)。大規模な木質バイオマス発電所と大手製材所の集積により、事態は急転している訳です。優先順位が変わってきているんですね。
ま、そこら辺は長くなるのでまた今度w